「TOPIXのテクニカルな面を中心に考えてみます」
いつものように市況を展望する前に、今回は出版記念講演会
の告知をさせて下さい。
[1] 講演会の告知です
新刊「老後の不安がうまいこと晴れる本」の発売から1ヶ月を
経た9月27日に、東京・渋谷において開催いたします。
今回も、株式投資に関するお話が中心ですが、今回は私だけ
ではなく、少しの時間ですが、共著者の奥田弘美先生にも
ご登壇いただけるレアな機会ですので、この機会を是非
お見逃しなく!
また、すばる舎のエース編集者様にも特別にご登壇いただきます。
出版を目指していらっしゃる方は、質疑応答で、マル秘
アドバイスも聞けるかもしれません!
「老後の不安がうまいこと晴れる本 出版記念講演会」の
詳細につきましては、こちらをクリックして下さい。
[2] 市況展望 (執筆日時:9月13日 24時)
(1) 今回はTOPIXのテクニカルな面を中心に考えてみます
前回までで、日経平均株価はAI・半導体関連銘柄に
引っ張られてしまっているので、指標としての機能が
やや脆弱になっている。なので、TOPIXを見た方が、
日本株に関する実際の肌感覚に近い、ということを
論じてきました。
そういった状況は、まだ残存しており、9月11日
(金曜日)のNT倍率も「15.9倍」で、ピーク時よりは
マイルドになったとはいえ、NT倍率の水準は、まだ
高いです。
そこで今回は、TOPIXのテクニカルな面を中心に
考えて参ります。
(2) TOPIXの週足チャート
TOPIXの2023年1月以降の週足チャートを見ますと、
植田ショック(2024年8月)とトランプ関税ショック
(2025年4月)の時期を除いて、26週移動平均線の
水準を割り込んだことは、ほとんどありません。
ですから、まず最初に、単純に考えれば、「この
下値抵抗のトレンドが続く限りにおいては」という
条件付きですが、TOPIXの下落は、一時的な調整に
終わる可能性があると考えることができます。
では、この「下値抵抗のトレンド」はいつまで続く
のかについて考えてみます。
一寸先は闇の株式市場において、先のことを正確に
予測することは極めて困難です。ただ、TOPIXのような
マクロの指標は、過去の推移を読み解くことで、
ある程度の精度で、今後の予測を立案することには、
一定の意味はありそうです。
(3) TOPIXの過去の推移
そこで、過去の推移を見る時、私は植田ショック
とトランプ関税ショックの株価下落を「ダブルボトム」
と位置づけて、2016年に示現した「ダブルボトム」
と対比して考えます。
2016年にも2月に「世界同時株安」、6月に
「BREXIT ショック」が発生して、「ダブルボトム」
を形成しています。
(当時の安値は、およそ「1,198ポイント」です。)
その後は、資産インフレの上昇圧力を受けて
株価は上昇し、2018年1月に、およそ「1,912
ポイント」の高値を付けています。
この事例で、「ダブルボトム」の二番底を付けて
から最高値を付けるまでの期間は約「1年7ヶ月」
で、上昇率は約「60%」です。
これを現在の状況に当てはめますと、今回は
「ダブルボトム」の二番底を付けたのが「2025年
4月」で、最安値が「2,243ポイント」です。
そして、「2025年4月」の「1年7ヶ月」後は
「2026年11月」で、上昇率が「60%」となる水準は
「3,589ポイント」です。
直近のTOPIXの最高値は8月に付いた「4,220
ポイント」ですから、今回の上昇率は「88%」で、
2016年6月からの上昇率(60%)に比べますと、
かなり高くなっていますし、上昇のスピードも、
少なくとも3ヶ月は速いです。
このようなことを加味して考えますと、現在
までの下値抵抗のトレンドは、「いつ終わっても
おかしくはない」ということになります。
すると、上の(2)で予測の前提条件としていた
「この下値抵抗のトレンドが続く限りにおいて」
ということが崩れてしまいますので、上の(2)で
提示した「TOPIXの下落は、一時的な調整に
終わるのではないか」という予測も崩れてしまい
ます。
(4) 下落するとしたら、どこまで下がるのか
では以下で、一時的な調整に終わらずに、
もっと大きく下落するとしたら、どこまで
下がるのかについて考えてみます。
現在も続くインフレ基調が鮮明になったのは
2023年の年初からです。そして、2023年の年初
以降は、上に述べたダブルボトム以外では、
TOPIXの値は「52週移動平均線を割っていない」
のです。
このことから推定しますと、比較的大きな
下落が起こって、26週移動平均線を下回った
場合でも、TOPIXの値が「52週移動平均線を
割る可能性は低い」のではないかと考えられ
ます。
TOPIXの値が「52週移動平均線を割る水準
というのは、現時点では「3,685ポイント」ですし、
現在の52週移動平均線は上昇過程にあります
ので、下値のメドは、「およそ3,700ポイント」
くらいではないかと考えられます。
9月11日のTOPIXの値は「4,028ポイント」です
から、ここからの下落率は、「約8%」という
ことになります。
ここからの下落率が「約8%」というのは、
「1,000円の株価が920円まで下がる」という
ことですから、そう考えれば、あまり大きな
下落ではありません。
日経平均株価の週足チャートで言えば、9月
11日の終値は「64,011円」ですが、これが
「58,900円」くらいまで下がるということに
なります。
AI・半導体関連銘柄の株価次第では、日経
平均株価はもう少し下がるのかもしれませんが、
日経平均株価も52週移動平均線の水準は割らない
であろうと考えれば、「58,000円前後」が下値
のメドになるであろうと考えられます。
なお、TOPIXの値が「3,700ポイント」になると
仮定した場合、直近の最高値(4,220ポイント)から
の下落率は「12.3%」ですので、中規模クラス
の下落としては妥当な範囲です。
ただし、もう少しの間は(すなわち、アメリカ
の中間選挙がある11月前後までは)、26週移動
平均線までの下落で収まる可能性もあります。
また、それとは逆に、想定外の悪材料が噴出
した場合には、もちろん、52週移動平均線まで
の下落よりも、もっと大きな下落が発生する
ことになります。
[3] ニュースなどから考えられること
さて、以下では、昨今のトピックスを材料
として、いくつかの論点について私見を述べて
みます。
(1) 「企業物価指数 7.6%」が意味すること
企業物価指数が、前年比で「7.6%」と発表
されました。
この数字が意味することは単純明快です。
「物価上昇がまだまだ続く」ということです。
「まだまだ続く」というのは、「少なくとも
向こう2ヶ月〜1年は続く」ということです。
と言いますのも、企業物価指数の上昇が
消費者物価指数に反映されるまでには(物品
の種類にもよりますが)、短くて2ヶ月から
長いと1年くらいかかるからです。
また、原油価格の上昇が消費者物価指数に
反映されるのは、短くて数週間、長くて
2ヶ月くらいだと言われています。
ということは、中東戦争の再燃によって
原油価格も再び高騰していますので、
「向こう数週間から1年は物価上昇が続く」
ということを意味しているのです。
しかも、今のインフレが向こう数週間で
収まる気配は全くなく、1年で収まるか
どうかも、非常に疑問です。
国民の皆さんは、そういうことを覚悟して
いるのでしょうか。
「物価上昇が早く収まってくれないかなぁ」
と漠然と考えているだけだとしたら、その
期待はすでに叶わないことが判明しています。
「向こう1年程度は物価上昇は収まらない」
ということを意味する数値が、すでに公表
されているからです。
そしてさらには、輸入物価指数と輸出
物価指数が凄いことになっています。
今回公表された企業物価指数の「7.6%」
でも、かなり高いのに、輸入物価指数は
前年比で「17.9%」ですし、輸出物価指数
に至っては、前年比で「24.8%」です。
この異様に高い輸入物価指数と輸出物価
指数は、すごく重要な事であるにも関わらず、
政府にとって不都合すぎて、一切報道されて
いません。
これら(輸入物価指数と輸出物価指数)
の異様に高い数値は、
1.諸外国における物価上昇率は日本の
比ではないこと
2.これからも諸外国からの「外圧」に
よって、物価は上昇していくであろう
ということ
3.ついでに言えば、日本国内の「7.6%」
という企業物価指数は、かなり抑えた
数字なのではないかということ
を意味しています。
輸出入の物価指数だけが18%も25%も
上昇しているのに、「日本だけが物価上昇
が沈静化していく」と考えるのは、あまり
にも現実的ではないです。
また、輸出入の物価指数をみてしまいますと、
「日本国内の企業物価指数も、実はこんなに
低くはないのではないか」と勘ぐりたくなり
ます。
いずれにしましても、これらの指数は、
「インフレはまだまだ続く」ということを
如実に意味しています。
(2) 「トランプ配当 5,000ドル」が意味
すること
アメリカでは、トランプ大統領と共和党が
選挙で勝つことを条件に、アメリカの全ての
成人に「5,000ドルを給付する」とトランプ
大統領が公表しました。
こんなことを宣言するということは、戦争
やインフレを背景位にして、トランプ大統領
と共和党がよほど窮地に追い込まれている
ということがわかります。
「トランプ配当 5,000ドル」が意味する
ことは、ズバリ、「公職選挙法違反の一丁目
1番地」である「金品の授与による選挙誘導」
です。
日本のマスコミが、なぜそのように報道
しないのかが不思議で仕方ありません。
そして、これは「トランプ配当」と和訳
されていますが、原語は "Trump dividend"
です。
"dividend" の訳は「配当」という名詞
ですが、その動詞は "divide" で、その訳は
「配る。分配する」です。
すなわち、「票を得るためにお金を配る」
ということなので、「票買収」という
「公職選挙法違反の一丁目1番地」なのです。
もっと批判の嵐にならないとおかしいこと
なのです。
(3) 「一人当たりGDP 42位」ショック
2026年におけるドルベースの日本の名目
GDPは、世界で4位を維持する見込みです。
16年前の2010年に中国に抜かれて3位に
なっていましたが、2023年にドイツにも
抜かれて4位になりました。
このままですと、現在5位のイギリス、
6位のインドに抜かれるのも「時間の問題だ」
と言われています。
「日本経済は、ずっと成長していないから、
仕方ないか」とか、「184ヵ国もあって、
4位ならまだかなりいい方じゃないか」
という意見もあるようですが、もっと
シビアな事実をお伝えしなければなりません。
日本が世界で4位なのは、(ドルベースの)
「名目GDP」で、それは「金額ベース」なの
です。
そして、こういった経済指標は、すべからく
「金額」ではなくて、「率」でみなければ、
本質はつかめないのです。
この「名目GDP」を「率でみる」というのは、
すなわち「『一人当たり』の名目GDPでみる」
ということです。
そこで、2026年における「一人当たり名目
GDP」の世界ランキングを見てみますと、
日本は、なんと!「42位」になる見込みなの
です。
以下で、31位から50位までの国を列挙します。
31位 台湾 成長率 6.6%
32位 スペイン 成長率 8.5%
33位 バハマ 成長率 2.2%
34位 プエルトリコ 成長率 2.0%
35位 スロベニア 成長率 8.8%
36位 チェコ共和国 成長率 11.5%
37位 サウジアラビア 成長率 6.6%
38位 エストニア 成長率 9.9%
39位 韓国 成長率 3.3%
40位 リトアニア 成長率 11.3%
41位 ブルネイ 成長率 4.6%
42位 日本 成長率 -0.7%
43位 ポルトガル 成長率 10.2%
44位 ガイアナ 成長率 22.9%
45位 クウェート 成長率 7.4%
46位 ポーランド 成長率 10.4%
47位 スロバキア共和国 成長率 9.6%
48位 クロアチア 成長率 9.7%
49位 ギリシャ 成長率 9.8%
50位 バーレーン 成長率 0.8%
今の日本が、こんなかんじだと思って
いましたでしょうか?
(私は、この体たらくぶりが残念で仕方
ありません。)
しかも、ここに掲げた20ヵ国の中で、
日本は唯一のマイナス成長です。
一方で、「一人当たりGDPは意味がない」
という意見があるようです。その根拠は、
・国民の幸福度は、お金だけでは測れない。
・他国と比べても意味がない。
・一人当たりGDPは平均値であって、平均値
は、上位層や下位層が多いと、その方向に
引っ張られてしまうので意味がない。
・為替レートにも大きく左右されてしまう
ので意味がない。
などということのようです。
しかし、ここではそういうことを議論する
意図はないのです。
「国民の幸福度は、お金だけでは測れない」
のは当たり前のことですし、「他国と比べても
意味がない」というのは、問題の本質とは
関係ありません。
「一人当たりGDP」というのは、その国民の
平均的な「生産性」を表していますので、
「平均値は(上位層や下位層に 引っ張られて
しまうので)意味がない」などという言い訳を
する前に、
「それにしても、生産性の順位が低すぎる!」
という点が、極めて深刻な問題なのです。
また、為替レートにも大きく左右されてしまう
とはいえ、為替レートというのは、その国の国力
の指標ですから、「為替レートに大きく左右
されてしまうので意味がない」というのは、的を
射るものではありません。
次に、世界における日本のプレゼンス(存在
意義・立ち位置)を時系列でお示しすることで、
ここで問題としている重要な点を浮き彫りに
します。
以下で、主な年における「日本の一人当たり
GDPの世界ランク」をお示しします。
1980年 23位
1985年 13位
1988年 2位 (最高位)
2000年 3位 (この年までは高い水準を維持)
2003年 12位 (1985年並みの二桁に陥落)
2006年 23位 (1980年並みの順位に陥落)
2022年 33位 (1980年以来、初の30位以下に陥落)
2024年 37位
2026年 42位 (見込み)
2000年までは「3位」だったのに、この26年で
日本の一人当たりの「生産性」は、世界ランク
において凋落の一途を辿っているのです。
これは、極めて由々しき問題なのですが、
一個人には国全体を動かす力はありません。
政治の質は国民全体の質で決まりますから、
やはり一個人では政治の質を上げることも、
政治を動かすこともできません。
ですから、一個人としては「各人が生産性を
向上させて、各々の幸福を追求するしかない」
ということになります。
そして、そうした努力が集積した結果として、
一国の生産性が上がって、幸福度と満足度の高い
国になっていくのであろうと考えています。
「各人が生産性を向上させる」というのは、
拙著で繰り返し述べてきていますように、
「本業+副業+運用」
の三本の矢で、各人の労働生産性を引き上げる
ということです。
「本業+副業+運用」が、個人の生産性を
向上させるための「サカキノミクス」の
三本の矢です。
(4) 円高の行方
現在、円高が進行中です。
この円高は、アメリカが主導するものです
から、アメリカの中間選挙(11月上旬)くらい
まで続く可能性があります。
アメリカ政府のキーパーソンは、ベッセント
財務長官にしても、トランプ大統領にしても、
マーケットのプロ中のプロです。
アメリカが目論んでいるのは、アメリカ人が
「短期の利ざや取り」で保有している日本株や
日本の債券の「売り抜け」です。
何もしなければ、このままジリジリと円安が
進んでしまい、アメリカ人が短期の利ざや取り
などの短期的な目的で保有している日本株や
債券の価格は、ドル建てでは、強い下方圧力に
晒されます。
そこで、アメリカは国を挙げて、「一時的に」
円高ドル安を仕掛けてきているのです。
マーケットのプロ中のプロであるベッセント
財務長官は、中長期的には「自国通貨が安い
ことは、国益にとって不利に働く」ということ
を熟知しています。
ですから、このままずっと(円高)ドル安を
放置するとは考えにくいです。
為替(ドル円レート)は、古くは1985年9月
のプラザ合意よりも前から、「アメリカの都合」
で、その方向性が決まることがほとんどです。
そして今は、ファンド筋の「短期的な日本
資産の売り抜け」というニーズに迎合して、
アメリカは国を挙げて、「一時的に」円高
ドル安を仕掛けてきている、というわけです。
ですから、現在進行中の円高ドル安は
「一時的なもの」であって、遅くとも今年の
11月以降には、再び「趨勢的な円安」に戻る
であろうと考えています。
<今回は以上です。>
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