「中東ショック PART2」
今月15日に配信した無料メルマガの続編です。
2月末に勃発した「中東ショック」について
さらに深掘りして参ります。
[1] 市況展望に絡めて (執筆日時:3月18日 24時半)
前号では(0)で、「中東ショック」が勃発した
理由を、「エプスタイン文書をケムに巻くため」
であるとしました。
そして、現在進行中の中東情勢の不安定化の
今後の展開として、
1. 比較的短期間で終結する (約30%)
2. 中東戦争自体はズルズルと続くが、株式
市場で材料視されなくなる (約70%)
3. 深刻化して世界大戦になってしまう (0.1%未満)
のいずれかであろうと述べて、1. と2. に
ついて、前号で、やや詳しく書きました。
そして、3. で、「深刻化して世界大戦に
なってしまう」ということも書きましたが、
そうなる確率は「0.1%未満」としました。
つまり「1,000分の1未満」です。
このような人類最悪の悲観論に走る前に、
現在までの事態を冷静に考えていこうと
思います。
(1) ホルムズ海峡は、わざと狭いままにしてある
まず、昨今、毎日のように報道されている
「ホルムズ海峡」ですが、これに関する基本
的かつ、重要な認識をお示しします。
ホルムズ海峡とその封鎖の問題は、今から
50年以上前の1973年に発生した「第一次オイル
ショック」の時から、すでにあったものです。
世界の石油の輸送経路として非常に大きな
割合を占める「ホルムズ海峡」の海域が非常に
狭くて、ここを封鎖されるとエネルギーの
サプライチェーンに重大な影響があるという
ことは50年以上も前からわかっていたこと
なのです。
そして、これまでの50年間に、ホルムズ
海峡を通った石油の量は、計り知れない
莫大な量ですから、そのほんの一部を予算化
すれば、ホルムズ海峡を大幅に拡げる護岸
工事などは、とっくの昔にできていたはず
です。
なのに、それを今までやらなかった。
それは、産油諸国が「わざとやらなかった」
としか考えられません。
いざという時に、ここを封鎖してやれば、
国際政治の上で、産油国が優位に立てるから
でしょう。
すなわち、日量の石油産出量の調整を行う
ことの他にも、この石油の要衝を握っておく
ことが、国際政治の上で重要であると産油国
が考えて、敢えて狭いままにしてあるのだと
私は考えています。
すなわち、産油諸国は、有事の際に有利に
立ち回りたいがために、わざとホルムズ海峡
を狭いままにしているので、これは極めて
「政治的な判断」で、どうにでもなること
なのです。
ですから、国際政治経済の上で、産油国
が決定的に有利な状況を創り出すことに
成功するか、またはその逆に、封鎖し続ける
ことが産油国にとって決定的に不利になる
ような事態になれば、封鎖は即時撤回される
でしょう。
(2) ホルムズ海峡の封鎖は、産油国にも不利
それと、ホルムズ海峡を封鎖すれば、原油
価格が高騰しますので、産油国にとっては
有利なように思えますが、物理的に原油を
輸送できない = 産油国にとっては原油を
「売ることができなくなる」わけですから、
原油の価格が上がっても、産油国は肝心の
「売上」を手にできないのです。
ですから、産油国の側の打算からしても、
封鎖は長続きさせられないのです。
さらには、原油価格が1バレル=70〜80ドル
を超える状態が長期化すると、アメリカ産の
シェールオイルが採算ラインにのってくる
のです。
せっかくこれまで原油価格を1バレル=70
〜80ドル以下に抑え込んできて、アメリカの
シェールオイル産業を廃墟化させることに
成功してきたのに、このまま原油価格の
高止まりを長期化させてしまうことは、
産油国にとって最大のライバルである
「アメリカのシェールオイル産業」に
息を吹き返らせてしまう(=最大のライバル
を育ててしまう)ことになるのです。
それは産油国にとって、自分で自分の首を
締めてしまうことです。この「シェールオイル」
の存在が、過去の2つのオイルショックとは
決定的に異なる点です。
ですから、原油価格が100ドルを超えるのは
「一時的かつ投機的なもの」であると考え
られます。産油国の打算からしても、原油価格
が100ドルを超えるような状況を長期化させる
のは不利なので、そのような状況は「一時的
かつ投機的なもの」であると考えるのが妥当
でしょう。
また、今回のような情勢になるのは、石油
利権の側からは、原油価格が底上げになる
ので有利なことなのですが、原油価格が上がり
過ぎたら、上に述べたシェールオイルとの
関連で、芳しくない。
そして、ホルムズ海峡の封鎖によって、
石油の流通量が激減してしまうのも困る。
このように考えていくと、ホルムズ海峡の
封鎖は、誰のためにもならないので、長続き
しない可能性の方が圧倒的に高いのです。
原油の供給が激減することは、日本は
もちろんのこと、アメリカ経済や中国経済
にとっても大打撃です。アメリカのシェール
オイル産業と軍需産業にとっては福音ですが、
アメリカ経済全体としては、大きな打撃に
なるのは間違いありません。
そして、上に述べたように、産油国に
とってすらも決して有利だとばかりは
いえない状況があるのです。
そうなると、産油国側と米中の「チキン・
レース」になるわけですが、トランプは
常に「チキンズ アウト」(TACO:Trump
Always Chickens Out)なので、「チキン・
レース」には弱いのです。
ですから、原油価格の高騰や株価下落
が長引けば、トランプ政権は早期に現状
を打開する方向に舵を切るでしょう。
また、(前号でも述べましたが、)戦争
の長期化は、アメリカ国民からの人気を
ガタ落ちさせるので、中間選挙を控えた
トランプ大統領は、「戦争は起こした
ものの、早めに終結させたい。」と考えて
いるはずです。
それに、そもそも、開戦の直接的な動機
が「エプスタイン文書をケムに巻くため」
であるとすれば、アメリカもイスラエルも、
あまり長期化は望んでいないはずなのです。
この戦乱のおかげで、「エプスタイン
文書問題」を人々が忘れてくれればいいの
ですから、長期化させるメリットは
ありません。
一方で、石油利権の観点からは、産油量
を減らさずに原油価格を底上げさせることが
できたのですから、メリットですし、軍需
産業にとっては最大の利益チャンスですから、
早期の停戦が一筋縄ではいかないのも事実
です。
しかしながら、ウクライナ戦争も開戦
から1ヶ月程度で、株式市場では材料視
されなくなりました。
また、かのコロナショックでさえ、
株価が下落しっぱなしだったわけでは
なく、日経平均株価やNYダウは急速な
V字回復を遂げました。
ですから、
「相場は悲観の中から生まれる」
という相場格言があるように、最悲観
の中で、相場は底を打つことが多いの
です。
市場参加者は貪欲ですから、株価が
安すぎるとか、底を打ったと判断する
と、総悲観の中でも株価は自律的に
反発します。
(3) 市場参加者の注目は、次の材料にも
向かう
さて、今月の27日には「配当の権利
付き最終売買日」がやって来ますから、
配当の権利取りの動きが出やすくなります。
また、4月の下旬からは、企業の決算
発表に注目せざるを得なくなるでしょう。
株価の決定要素の一丁目一番地は、やはり
なんといっても「企業利益」なのです。
原油価格の高騰は企業業績を押し下げる
と言われますが、インフレが進めば、企業
業績をノミナルには(名目値としては)押し
上げる効果の方が、結果としては大きいです。
日本人の購買力が上がらなくても、国際
優良企業にとっては、主なお得意様は外国人
ですから、インフレはやはり、企業業績の
押し上げ要因になります。
(4) 最悪のシナリオは、誰も望まない
前号でも、3. で、世界大戦になってしまう
という最悪のシナリオにも言及しましたが、
それはあくまでも1,000分の1未満の極めて
低い確率であろうと考えています。
なぜなら、このシナリオは「人類全体が
望んでいないこと」ですので、その方向
にはなかなか行かないと考えるのが冷静な
見方だからです。
3月18日の時点では、日経平均株価が
「55,100円」を超える水準まで戻って
います。
最悪のシナリオが少しでも意識されて
いるのであれば、この水準までも戻らずに
51,000円台の安値圏でグズグズし続けるか、
現時点ですでに50,000円以下に沈んでいるか
のいずれかになっているはずです。
(5) 過去の下落率から学ぶ
さて、今回の下落を機に過去13年間の
日経平均株価の下落の履歴を大ざっぱに
まとめてみました。
過去13年間というのは、アベノミクス
の開始以降のことです。それよりも前
には(1990年のバブル崩壊や2008年の
リーマンショックなどのように)もっと
過激な下落もありましたが、それらは
現在とはあまりにも隔世の感が強いので、
2013年の年初にアベノミクスが開始した時
以降のデータに基づいて調べました。
また、この調査は、株価の「急落時」
における下落率の実態調査ですので、
いわゆる「直近の高値」からの下落率
ではなく、「株価が急落する直前の高値」
からの下落率を調査しました。
その結果は次のようなもので、今回の
下落率は今までのところでは、過去13年
間で8番目の大きさでした。
(日経平均株価の小数点以下は切り捨て。
単位は、円)
名称 (年) 高値 安値 下落率 日数
1. コロナショック(2020) 23,806 16,358 31.3% 28日
2. 世界同時1(2016) 19,113 14,865 22.2% 44日
3. 植田ショック(2024) 39,188 31,156 20.5% 5日
4. トランプ関税(2025) 38,220 30,792 19.4% 12日
5. チャイナショック(2015) 20,946 16,901 19.3% 49日
6. 世界同時2(2018) 22,698 18,948 16.5% 23日
7. パウエルショック(2018) 24,129 20,347 15.7% 62日
8. 中東ショック(2026) 59,332 51,407 13.4% 15日(今回)
9. マイダン革命(2014) 15,958 13,995 12.3% 13日
10.BREXIT(2016) 16,830 14,864 11.7% 16日
<注>
「世界同時1・2」は、いわゆる「世界同時
株安」です。
マイダン革命は、2022年のウクライナ侵攻の
遠因です。
日経平均株価急落の履歴をこのように
みてきますと、今回の下落率がすでに、
かなり大きいということがわかりますし、
下落日数も、短すぎず、長すぎずです。
なお、下落日数の平均値は「26.7日」
です。
3月9日の安値(51,407円)は、短期間で
かなり大きな下落率であり、過去13年間で、
歴代8位の下落率だったので、3月9日の
安値が大底になる可能性もあります。
ただ、現時点では、やはり「すでに
大底を打った」と確定的に断定することは
できません。二番底や新安値を付けにいく
可能性も、現時点では否定はできません。
そこで、もし今後、もっと下がると
仮定した場合、過去の履歴から考えて、
どのくらいの水準が最安値の目安になる
のかについて考えてみます。
今回の下落よりも大きな下落率だった
事例を取り上げて、その下落率を当て
はめて、最安値の目安を算出してみました。
最安値 二番底
コロナショック並みの下落 −−− 40,770円 無
世界同時1並みの下落 −− 46,147円 有(BREXITの時)
植田ショック並みの下落 −− 47,171円 無
トランプ関税並みの下落 −− 47,802円 無
チャイナショック並みの下落 −− 47,875円 やや下押し
世界同時2並みの下落 −− 49,531円 無
パウエルショック並みの下落 −− 50,033円 やや下押し
今回の下落よりも大きな下落率だった
7つの事例のうちの4つは、二番底や
やや下押し(さらなる下落)が無かった
のです。
以上のような過去の下落率の履歴
から推定しますと、
1.次の節目は、「50,000円前後」
2.その次の節目は、「46,000円〜48,000円」
3.コロナショック並みの下落に発展した場合は
「40,000円前後」
ということになります。
過去の下落率の履歴からは、今後の安値は
これらの1.〜3.のいずれかに帰着する、
ということになりますが、現在までの動向、
そして、3月18日に前日比で1,500円以上も
戻ったことを勘案しますと、現時点では、
私は次のような感触を持っています。
<1> 3月9日に底を打っている可能性が約50%
<2> 51,400円前後の二番底を付ける可能性が約20%
<3> 49,000円〜49,600円が大底となる可能性が約30%
<4> 40,000円や、それ以下が大底となる可能性が0.1%未満
といったところです。
チャイナショックの時の「やや下押し」では、
最初の安値から約「4.6%」の下落で大底
になりました。
また、パウエルショックの時の「やや下押し」
は、最初の安値から約「3.5%」の下落で
大底になりました。
そこで、今回の最初の安値である「51,407円」
から約「4.6%」下落すると「49,048円」となり、
約「3.5%」下落すると「49,608円」となります
ので、今後、やや下押しがあると想定しますと、
<3>のように、「49,000円〜49,600円」が大底
になる、ということになります。
<4>は、中東戦争の収拾がつかなくなり、
世界大戦に発展してしまう場合ですが、
これは悲観的すぎます。こうなりそうならば、
3月18日のような強い戻りは発生していない
はずです。
それに、万一の万一、世界大戦に発展して
しまう場合には、40,000円どころか30,000円
や、それ以下の水準まで一気に大暴落をして、
東証が取引停止になってしまうでしょう。
そのような、全人類が望まない事態には
まずならないと考えるべきでしょう。
そうであれば、やや悲観的に考えても、
<2> 51,400円前後の二番底を付けるか
<3> 49,000円台が大底になるか
のいずれかで、今回の下落は収束する、
と考えるのが冷静な情勢分析なのでは
ないかと考えています。
18日の24時の時点では、シカゴ市場の
日経平均先物の値は、東京市場の終値
よりも1,200円以上安い「54,045円」に
なっています。
依然として、不安定な状況が続いて
いますので、充分に慎重な行動を採る
必要がありますが、過度なマスコミ報道に
感化されて。過度に悲観的になることは
控えたいところです。
<今回は以上です。>
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