「参院選前と、その後」
まずは、いつものように市況を展望します。
[1] 市況展望(執筆日時:7月16日 11時)
(1) 過去1ヶ月を振り返ります
過去1ヶ月の日経平均株価を振り返り
ますと、6月15日の始値が「38,056円」で、
その2週間後の6月30日に「40,852円」の
高値が付き、そこからは緩やかな下落を
続けてきていますが、下値も「39,288円」
までですので、下落率は「3.8%」と
限定的です。
前回のこのメルマガで、
「36,000円〜40,000円が妥当なレンジだ」
と述べました。
そして、6月中旬から7月中旬の現在
まででは、
「38,000円〜40,800円のレンジ」
でしたので、まぁまぁ妥当な推移だった
と言えそうです。
参院選挙の選挙相場といった期待が
先行して、6月30日に「40,852円」の
高値が付きましたが、日経平均株価が
終値で「40,000円」を超えていたのは
6月30日とその前営業日の2日間だけ
でした。
なので、やはり、これまでの1ヶ月間
に関しては、日経平均株価が40,000円を
抜けて、どんどん上に行くには、まだ
力不足だった、ということです。
(2) 今後の展開
選挙相場であるにもかかわらず、
6月30日を頂点にして、日経平均株価
がイマイチ盛り上がらない(どころか、
ややジリ貧)なのは、ひとつには、
国民が、
「今回の選挙では、自公は勝てない
だろう。そうだとすれば、選挙後に
日経平均株価は下がってしまいそう
だから、今は株を買い上がる気が
しない。」
と考え始めているのではないかと
思うのです。それが、この2週間の
盛り上がりに欠ける相場展開の底流に
あるのではないかと考えています。
このメルマガの後半の[2]で
述べますが、国民が期待を寄せる
ことができる政策を打ち出す政党
がなくて、国民は消去法で候補者
を選ぶしかないな、と考えている
ことでしょう。前回の都知事選の
時を彷彿とします。
しかしながら、そういった消去法
による選挙になってしまうと、
「結局は既得権を持った既成の政権
与党が勝ってしまう」
ということも前回の都知事選で学び
ました
(一般の国民の票は割れてしまい、
ゴリゴリの岩盤支持層を持っている
自公が勝ってしまう、というわけ
です。)
なので、今回の参院選も、自公が
かろうじて過半数は維持するかんじ
かもしれません。微妙な情勢です。
ですが、それでは、世の中は何も
変わらない、ということなのです。
そして、株式市場というのは、常に
「先」を見据える習性があります。
ですから、20日の投開票が終われば、
その結果を受けて、日経平均株価が
動くのは21日か22日だけで、そこからは
「企業業績」に注目し始めるでしょう。
7月23日辺りから8月の中旬に向けて、
「第1四半期決算発表」があるからです。
なお、20日の投開票の結果、自公が
思いのほか大敗した場合には、比較的
大きな下落になることも考えられます
ので、その場合には、日経平均株価が
動くのは21日か22日だけではない
ということになるでしょう。
「政局不安」というのは、株価には
マイナスに作用するのが常でです。
市場参加者は「政経不可分」と考えて
いて、政治が混乱すると、政府が経済
運営でも後手に回るだろうと考えて、
日経平均株価が下落基調になるのです。
その場合の下値のメドは、従前の
下値予想よりも1,000円ほど高い
「37,000円前後まで」でしょう。
なお、相場格言に、「山 高ければ、
谷 深し」というのがありますが、
今回の選挙相場は、その真逆で、
「山 高くなかったので、谷も
深くない」というかんじになる
のではないかと思いますので、
よほど想定外の事象が発生しない
限り、参院選後に日経平均株価の
下落が起こった場合でも、下値は
「37,000円」を維持する可能性が
高そうです。
なお、これは、次のようなこと
から導出しました。
トランプ関税ショックが回復した
のは、「5月13日」です。それは
トランプ関税ショック直前の日経
平均株価の高値が「38,220円(3月
26日)」で、日経平均株価が、その後
の暴落後に最初にその水準を超えた
のが、「5月13日」だからです。
そして、5月13日というのは、
企業業績が概ね出揃った時期と
符合するのです。企業業績が概ね
出揃ったのを見て、
「トランプ関税の影響は、思った
より大きくはないじゃないか」
と市場参加者がトランプ関税を
織り込んだ、ということです。
そしてその後は、緩やかながら
ですが、日経平均株価は着実に
右肩上がりを続けているのです。
このことは過去2ヶ月間の日経
平均株価の日足チャートをご覧
いただければ明白です。
<過去2ヶ月間の日経平均株価の推移>
高値 安値
5月13日 38,494円
5月22日 36,855円
5月29日 38,454円
6月2日 37,320円
6月11日 38,529円
6月13日 37,450円
6月18日 38,885円
6月26日 38,026円
6月30日 40,852円
7月14日 39,288円
このように、下値は着実に切り
上がってきており、高値も5月
29日からは切り上がってきています。
これは先行きに対する見方が
「強気か弱気か」の問題ではなく、
日経平均株価がこの2ヶ月間で
跡づけた「事実」です。
このようなことから、今後の
日経平均株価のレンジは、従来
よりも1,000円切り上がった
「37,000円〜41,000円」
を想定しています。
そして、参院選後の日経平均
株価の行方については、企業業績
次第です。
第1四半期決算で、企業業績が
「トランプ関税の足かせ」から
脱却しているようであれば、これ
までトランプ関税のせいでコンサバ
だった企業業績が上方修正されやすい
ので、日経平均株価は「41,000円」
を少し超える水準まで駆け上がる
でしょう。
その逆に、企業業績が「トランプ
関税の足かせ」に縛られているまま
であれば、6月30日に付いた高値
(40,852円)を超えられずに、この
右肩上がりのトレンドは、一旦は
解消されてしまうでしょう。
「トランプ関税の影響」が市場で
強く意識されるのも、参院選の
結果が市場で意識されるのも、
要するに、
「それが企業業績に何らかの
影響を与えるから」
なのです。
ということで、株価というのは、
なんだかんだと言っても、「企業
業績」が本丸なのです。
その動向次第で、日経平均株価
の方向性やレンジが決まるのです。
そして、国策的にインフレが推進
されている現下の日本においては、
また、諸外国で進展しまくっている
インフレがボーダーレスに日本に
伝播するようになった現下の日本に
おいては、企業業績は右肩上がりに
なるのが宿命です。
「インフレ」というのは、「数値が
上がること」です。
また、物価高というのは、企業の
売上高が増加することです。
インフレによって、もちろん企業
が支払う「原価」も増加しますが、
売上高も増加します。すると、
売上高 − 原価 = 利益
なので、利益、すなわち企業業績
も逓増傾向が続くのです。
これによって、「日経平均株価は
長期的には右肩上がりを続ける」
というのが論理的帰結です。
(2) 7月15日時点の各種の指標
さて、ここで、7月15日時点における
日経平均株価のファンダメンタルズ指標
とテクニカル指標を簡潔に概観します。
(「ストキャスティクス」を「ストキャ」
と略して表記します。)
<7月15日のデータ>
日経平均株価の終値 −−− 39,678円
日経平均のEPSの値 −− 2,537円
日経平均のPERの値 −− 15.64倍
日経平均のBPSの値 −− 28,140円
日経平均のPBRの値 −−− 1.41倍
日経平均のROEの値 −−− 9.0%
日足のRSIの値 −−− 59.21
日足のストキャの値 −− 57.04
週足のRSIの値 −−− 58.95
週足のストキャの値 −− 58.44
ドル建て日経平均 −− 268.69ドル
<コメント>
この7月15日のデータからは次の
ようなことが考えられます。
<1> 日経平均のEPSの値とPERの値
日経平均のEPSの値は、2,537円に
増えていて、
5月−−− 2,383円
6月−−− 2,457円
7月−−− 2,537円
というように増益傾向になっています。
今月下旬から8月中旬までに出揃う
企業業績が、この増益トレンドを維持
できるかどうかが、最大の注目点です。
上で述べたように、理論的には企業
業績は、インフレに連動して増益
トレンドを維持するはずですが、それが
どの程度現実のものになるかが、来月の
中旬には明確になります。
そして現時点では、PERの値が
「15.64倍」なので、日経平均株価は
40,000円前後の水準にあることが
ほぼ妥当だといったところです。
現時点における日経平均のEPSの
値が「2,537円」ですから、これに
先月のこのメルマガで解説したPER
の値の妥当なレンジである「14.50倍」
と「16.50倍」をかけることで、現時点
における日経平均株価の妥当なレンジ
が導出されます。それは、およそ
「36,800円〜41,900円」
ということになります。
(2,537円 × 14.50倍 = 約36,800円
2,537円 × 16.50倍 = 約41,900円)
この視点からも、日経平均株価の
今後の妥当なレンジは、
「37,000円〜41,000円(または42,000円)」
ということになります。
ただ、一時的には「37,000円」を
割ることもあるでしょうが、その水準
では「買いはあれども、売りはなし」
ですし、「41,000円前後」やそれを
超える水準では「売りはあれども、
買いはなし」です。
<2> ドル建て日経平均株価
ドル建て日経平均 −− 268.69ドル
ドル建て日経平均株価は、ドルを
基軸とする外国人投資家の目線から
見た日経平均株価です。
7月15日時点のドル建て日経平均
株価は、6月30日に付いた「283.46
ドル」の高値からは「5.2%」ほど
下落しています。
円建ての(普通の)日経平均株価は、
6月30日の終値から「2.0%」ほど
下落していますので、「5.2%」と
「2.0%」の差の「3.2%」は円安の
進行によるものです。
アメリカの景気は堅調を維持して
おり、トランプ関税によるアメリカ
国内でのインフレ懸念が持続して
いますので、今後、ドル円レートが
「149.50円」まで円安になると仮定
して、ドル建ての日経平均が6月
30日の高値(283.46ドル)に再度接近
すると仮定すると(すなわち、かなり
強気で想定すると)、日経平均株価は
283.46ドル × 149.50円
= 42,377円
ということになりますので、日本
企業の企業業績が好調を維持した
場合には、理論上は、史上最高値
近辺までの再上昇が起こっても
おかしくはない、ということに
なります。
ただしこれは、「かなり強気の
想定」ですし、実際にもし向こう
1〜2ヶ月以内に日経平均株価が
「42,000円」を超える局面があれば、
そこは絶好の売りチャンスです。
[2] 参院選における争点
(1) まずは正論から
参院選における争点が、物価高対策
としての「現金給付」(与党)か
「消費税減税」(野党)か、という
ような構図になっていますが、どちらも
正しくありません。
どちらも正しない理由を3つ挙げます。
<理由1 これらは物価高に対する直接
的な対策ではないから>
物価高対策には、ストレートに「物価
の沈静化」を謀る金融政策で対処するのが
正論だからです。これが1つ目の理由で、
これは根源的な理由です。
現金給付は、あまりにも一時的な弥縫策
に過ぎませんし、消費税減税は、課税の
公平性や直間比率の問題といった租税理論
の基底となる部分に関する検討を要する
事項なのです。
「物価高だから、消費税を減らす」という
のは、単に安直な施策でしかなく、理論
的な正当性はありません。
<理由2 これらは、さらなるインフレ
要因になるから>
現金給付や消費税減税を実施すれば、
国民全体の購買力がその分だけ上がる
ので、インフレを推し進めることにな
るから、というのが2つ目の理由。
要するに、現金給付にしても消費税
減税にしても、物価高対策という意味
では、イタチごっこになってしまうの
です。
なぜ全ての立候補者がこのことに
言及しないのかが、私には不思議で
なりません。
場当たり的な対策は、国民におもねって
いるだけとしか思えないのです。
なお、現金給付をすると、それが
貯蓄に回ってしまうことがデメリットだ
という説を耳にしますが、お門違いも
甚だしいです。
景気の刺激や消費の喚起を目的に
している場合は、給付額が貯蓄に
回ったら、効果の即効性が減殺される
というのは、ある程度は理に適って
います。
しかし、物価高対策で行うのであれば、
給付額は物価が高くなった分に充当
されるのが一般的です。
また、給付時には、たとえ貯蓄に
回ったとしても、そのお金は時間の
問題で物価高に対応して支出される
ことになるはずです。
それに、そもそも、現金給付または
消費税減税がおこなわれなければ、
国民は貯蓄を取り崩して物価高に対応
するわけです。そこに、現金給付または
消費税減税がなされれば、国民は貯蓄
を取り崩さずに物価高に対応すること
になるでしょう。
そう考えると、現金給付または
消費税減税は物価高に呼応するもの
になると同時に「貯蓄を取り崩さ
なくてすむ」という意味で、間接的に
「貯蓄に回っている」ことをも意味
しますね。
ですから、現金給付をすると、それが
貯蓄に回ってしまうことがデメリットだ
というのはお門違いですし、ナンセンス
な議論なのです。
さらには、「貯蓄に回ってしまう
かもしれない」というのは、消費税
を減税した場合も、減税分が貯蓄に
回ることもあるので、全く同じこと
なので、「支給額が貯蓄に回って
しまうかもしれない」というのは、
現金給付の場合に限らず、どんな
施策を講じた場合にも共通する論点
なのです。
この点に気づかない政治家と国民は
もう少しよく考えた方がいいです。
しかも、野党は、現金給付のことを
「バラマキだ」と批判しますが、消費
税減税だって、手法を変えたかたち
での(すなわち、税制の変更という
かたちでの)「全国民へのバラマキ」
ですから、
「どっちもバラマキじゃんか」
ということで、失笑ものです。
また、こういったことは、現金給付に
しても、消費税減税にしても、
「有権者に経済的な恩恵を供与して、
自分たちへの投票を促す」ことですから、
公職選挙法違反だという認識がないのも
不思議かつ、失笑ものです。
<理由3 どちらも、さらなる国家債務
の積み増しになってしまうから>
現金給付にしても消費税減税にしても、
その分の財源を調達する必要があり、
日本はすでに歳入額よりも歳出額の
方が遥かに多いので、どちらの施策を
行う場合も、それはさらなる国家債務
の積み増しになってしまうから、という
のが3つ目の理由。
これは、将来のハイパーインフレの
素になるのです。
<理由1 の再論>
ここで、根源的な理由である第一の理由、
すなわち、物価高対策には、ストレートに
「物価の沈静化」を謀る金融政策で対処
するのが正論だ、という点について議論を
もう一歩進めてみます。
「物価の沈静化」を謀る金融政策という
のは、直裁に言ってしまえば、「利上げ」
をすることなのですが、極めて残念な
ことに、日本経済は、「利上げができない
体質」になってしまっています。なぜならば
官民共に、借金が多すぎるため、あまり
大きな利上げをすると、官民共に経済が
破綻してしまうからです。
ですから、この正論は、たしかに政策
的には正論なのですが、借金大国ニッポン
では、これが禁じ手になってしまって
います。
それでは、打つ手はないのかというと、
物価高を沈静化する金融政策が打てない
中で、物価高に対処するためには、人々
の生産性を向上させる政策を打ち出すのが
本筋です。
生産性を向上させる政策というのは、
・公務員を含めて、兼業を全面的に解禁
する。
・ビジネスパーソンのリスキリングを
後押しする。
・国の内外を問わず、成長性のある分野
には、どんどんと官民を挙げて投資を
後押しする
・株式投資や不動産投資で、お金にも
働いてもらう
といったことが挙げられます。
現金支給や減税といったような、見かけ
倒しで肌触りのいい公約は、物価高に
対する本質的な打開策にはならないのです。
[3] 最低時給に関する2つの考察
全国の最低時給を決める会議がスタート
したそうです。そこで、ここでは「時給」
ということについて考えてみます。
(0) 総論的な本質
本質論として、時給(時間当たりの給与)
というのは、「単位当たりの労働生産性」
で決まるものなのです。「単位当たりの労働
生産性」とは、すなわち、その人が、その
場所で、1時間当たりでいくらの付加価値を
産み出すか、を意味します。
ですから、本質論的には、各人が「労働
生産性」を向上させない限り、時給は上がら
ないのです。
次に、最低時給の地域間格差が問題と
されることが多いですが、これも、その
地域ごとの「生産性」が反映されている
と考えられます。
また、地域間格差については、その地域
で生活する場合の生活コストも反映されます。
最低時給の地域別ランキング TOP 5を
見ると、次のようになっています。
(2024年10月)
1.東京 1,163円
2.神奈川 1,162円
3.大阪 1,114円
4.埼玉 1,078円
5.愛知 1,077円
関東圏の3県と大阪市・名古屋市が所在
する府県が上位を占めています。生活コスト
が高い地域においては、時給がある程度
高くないと働き手の生活が回らないからです。
ただし、全国で最上位の東京が1,163円
なのに対して、最下位の秋田が951円なので、
生活コストの差だけで決まっているわけでは
ないのです。
ですから、最低時給というのは、生活コスト
の差を反映しつつ、基本的には「生産性」で
決まっているといえます。
というのも、もし最低時給が主に生活
コストの差で決まるのであれば、東京と
秋田との時給の差が(1,163円 − 951円 =)
「215円」しかないのは、計算が合わない
からです。
すなわち、1日8時間、週に40時間労働
として、1ヶ月ではおよそ180時間です。
すると、最低時給の差は、1ヶ月で
(215円 × 180時間 =)「38,700円/月」
となります。
家賃だけを例にとっても、東京と秋田
との生活コストの差は1ヶ月で「38,700円」
だけのはずがないからです。
以上のようなわけですから、本質的な
「労働生産性」は、東京も地方都市も、
あまり大きな差はないが、生活コストの
差も多少は反映して、最低時給を決めて
いる、というのが実態を一番正確に
表しているのであろうと思います。
さて、7月11日に、WBSの番組内で、
「越境バイト」のことと、「『時給を
今すぐ1,500円に上げろ!』というデモが
あった」ということが報道されました。
ここでは、これらについてコメント
していきます。
(1) 通勤時間も加味せよ
「越境バイト」とは、最低時給の異なる
県をまたいでバイトに行くことを指します。
WBSの番組内では、茨城県の最低時給
と千葉県の最低時給は「70円/時」ほどの
開きがあるとのことでした。
そのため、実例では、茨城県での時給が
「1,050円/時」であるのに対して、千葉
県での時給が「1,150円/時」で、「100円
/時」の差があり、茨城県と千葉県の県境
近辺に住む女性が、千葉県まで「越境」
してバイトに行く、とのことでした。
そして、その実例では、その女性は
1日平均で4時間バイトをして、1ヶ月に
「約7万円」を稼いでいる、とのこと
でした。
しかし、これには盲点があります。
それが、「通勤時間も加味せよ」と
いうことなのです。
このことについて、簡潔な数値で
解説します。
千葉県で時給「1,150円」で、1日
平均4時間バイトをして、1ヶ月に
「約7万円」を稼いでいるその女性は、
通勤時間にどのくらいを要しているのか
が問題なのです。
そこで、茨城県の自宅の近所でバイト
をした場合には、通勤には徒歩や自転車
で片道10分、往復で20分で行けると仮定
します。
一方で、千葉県でバイトをした場合
には、通勤には徒歩や自転車と電車と
さらに徒歩で片道30分、往復で60分
かかると仮定します。
そして、1日平均4時間働くので、
時給の差が「100円」ということは、
千葉県で働く方が茨城県で働くよりも
1日400円余分にもらえますが、1日
40分余分の時間が通勤にかかるので、
その通勤のための時給は「600円/時」
となり、最低時給を大きく下回って
います。
(400円 ÷ 40分 × 60分 = 600円)
もう一つの角度からみてみましょう。
この女性が、千葉県または茨城県で
バイトをする場合の「通勤時間込みの
時給」を計算するのです。
この女性は、千葉県で時給1,150円で
1ヶ月に7万円稼いでいるので、1ヶ月
で(7万円 ÷ 1,150円 =)「約60時間」
働いています。
そして、1日平均4時間働いている
ので、1ヶ月に(60時間 ÷ 4時間 =)
15日通勤しています。
そして、千葉県への通勤には往復で
1時間かかるので、通勤時間は1ヶ月
で15時間です。
すると、この女性の「通勤時間込み
の時給」を計算しますと、
7万円 ÷ (60時間 + 15時間 =)
「933円」ということになります。
次に、茨城県に通勤するとしたら、
通勤にかかる時間は往復で20分なので、
通勤時間は1ヶ月で(20分 × 15日 =)
5時間です。
そして、この女性が茨城県でバイト
をした場合は、時給が「1,050円」で、
千葉県で働く場合と同じく「60時間」
働くとすると、1ヶ月のバイト代は
(1,050円 × 60時間 =)「63,000円」
です。
この茨城県で働いた場合の「通勤
時間込みの時給」を計算しますと、
63,000円 ÷ (60時間 + 5時間 =)
「969円」ということになります。
茨城県で働いた方が、「通勤時間
込みの時給」は「36円/時」高いの
です。
なお、通勤に要する交通費は、
バイト先が支給してくれるでしょう
から、働き手には損得なしですが、
雇用者側からみれば、越境バイトの
人には、交通費という余分なコストが
かかってしまうので、その分はコスト
のロスにもなる、というオマケ付き
です。
<結論>
越境してまで千葉県で働くのは、
(若者に人気の)「タイパ」が悪い
ので、茨城県の人は茨城県で働いた
方がいいですね。
雇用者側のコスパも悪くなりますし。
(2) 時給を上げれば、生産性が低い
人はクビになる
「時給を今すぐ1,500円に上げろ」
というデモがあった、という話題に
ついても、私流の指摘をしてみます。
「時給を今すぐ1,500円に上げる」と
何が起こると思いますか?
まず、単純に考えると、中小企業は、
人件費が(全国の加重平均の1,077円で
換算して)、およそ1.4倍に跳ね上がって
しまうので、潰れてしまって、全員
解雇です。
それでもいいのでしょうか?
いや、ダメですネ。
そして、「時給を今すぐ1,500円に
上げる」とした場合、現実的には、
雇用者(経営者)は次のように考える
でしょう。
(ここでは、従来の時給が「1,050円」
だったとして、10人の従業員を雇って
いると仮定します。)
「時給を1,500円にせねばならない。
現在、10人雇っている。
今までの人件費は1時間で(全員で)
『10,500円』だったが、このままだと
1時間で(全員で)『15,000円』になって
しまう。
このままでは、近いうちに倒産して
しまう。
よし、従業員数を7人にしよう。
そうすれば、1時間で(全員で)『10,500
円』のままですむから、倒産を避け
られる。」
かくして、雇用者(経営者)は従業員
のうちの3人を解雇しようとするのです。
残す7人は「時給1,500円に見合う
労働生産性がある人」ということになる
でしょう。生産性が低い順に3人が
レイオフ(解雇)され、残った7人も、
従来よりは忙しくなるでしょう。
これが、
「時給を今すぐ1,500円に上げろ!」
がもたらす結果です。
それでもいいのでしょうか?
いや、それでもいいのかもしれま
せん。
どちらがいいのかは、職場や従業員
によって千差万別でしょうけれども、
こういったように、「経営者の目線で
考えた上で行動しないといけない」
ということはたしかなことです。
<今回は以上です。>
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