「これからも15年くらいは、ずっとインフレ」
まずは、いつものように市況を展望します。
[1] 市況展望(執筆日時:6月15日 2時)
(1) 過去1ヶ月を振り返ります
過去1ヶ月の日経平均株価を振り返り
ますと、5月15日の始値が「37,832円」で、
その1週間後の5月22日に「36,855円」の
安値が付き、そこからは緩やかに上昇して
きていますが、6月11日に「38,529円」が
付いてからは若干調整をしながら6月13日
まできています。
前回のこのメルマガで、
「『5月22日』に『36,400円前後』の
最安値が付く」
と予想しました。時期はピッタリでした
が、安値の水準は、予想よりも400円ほど
高かったということになりました。
(2) 6月13日時点の各種の指標
さて、ここでさっそく日経平均株価
のファンダメンタルズ指標とテクニカル
指標を簡潔に概観します。
(「ストキャスティクス」を「ストキャ」
と略して表記します。)
<6月13日のデータ>
日経平均株価の終値 −−− 37,834円
日経平均のEPSの値 −− 2,457円
日経平均のPERの値 −− 15.40倍
日経平均のBPSの値 −− 27,024円
日経平均のPBRの値 −−− 1.40倍
日経平均のROEの値 −−− 9.1%
日足のRSIの値 −−− 54.23
日足のストキャの値 −− 29.72
週足のRSIの値 −−− 52.07
週足のストキャの値 −− 58.45
ドル建て日経平均 −− 263.45ドル
<コメント>
この6月13日のデータからは次の
ようなことが考えられます。
<1> 日経平均のEPSの値とPERの値
日経平均のEPSの値は「2,457円」と
なっていて、先月の「2,383円」よりも
若干改善しています。
トランプ関税の正体がわかってきて、
企業がコンサバな姿勢を緩めてきたという
かんじがします。
そして現時点では、PERの値が
「15.40倍」なので、ほぼ妥当だといった
ところでしょう。
現時点における日本の長期金利の水準
(1.5%弱)とリスクプレミアム(通常は
「5.0%」と認識します)から、妥当な
「株式の益回り」は「6.5%」ということ
になります。
そして、PERは「益回りの逆数」
ですから、妥当なPERの水準は
「15.38倍」と算出されます。
このようなことを根拠として、PER
の面からは、現在の株価水準は、ほぼ
妥当だということになります。
ただし、株価の水準というのは、
PERの値だけでは決まりませんし、
上にも書いた「リスクプレミアム」が
「5.0%」とは限らないのです。
市況解説などで「今はリスク・オフだ」
とか、その逆に「リスク・オンだ」とよく
言われますが、市場参加者の心理が弱気の
時は「リスク・オフ」で、その逆に強気の
時は「リスク・オンだ」というわけです。
そして、この「リスク・オフ」と
「リスク・オン」の「リスク」と、上に
述べた「リスクプレミアム」の「リスク」
が関連しています。
「リスク・オフ」の時は「リスク
プレミアム」が「5.0%」よりも高いと
認識され、それは益回りが高くなること
であり、PERの値が低くても妥当だ
と認識される時なのです。
つまり、「リスク・オフだ」という時
には、「リスクプレミアム」が「5.0%」
よりも高い水準、たとえば、「5.5%」
が妥当だと認識されて、益回りが
(1.5%+5.5%=)「7.0%」となり、
これの逆数であるPERの値は「14.28倍」
が妥当だ、と認識されます。
これとは逆に「リスク・オン」の時
には、「リスクプレミアム」が「5.0%」
よりも低い水準、たとえば、「4.5%」
が妥当だと認識されて、益回りが
(1.5%+4.5%=)「6.0%」となり、
これの逆数であるPERの値は「16.67倍」
が妥当だ、と認識される、というわけです。
ビジネススクールの「ファイナンス」
の講義のようになってしまいましたが、
このような理論的な根拠から、日経平均
のPERの値は、概ね、
「14.3倍〜16.7倍が妥当だ」
ということになると考えられるのです。
なお、ここで述べた「リスクプレミアム
が「4.5%」・「5.0%」・「5.5%」という
のも、かなりざっくりとした値ですし、
ここで「1.5%」と設定した長期金利の
水準も市場でも動きますし、市場参加者の
先行きの予想によっても変動します。
ですから、
「14.3倍〜16.7倍が妥当だ」
というのも、実際にはブレ幅があり、
昨今では、「14.50倍〜16.50倍」くらい
の水準で推移している、というわけです。
現時点における日経平均のEPSの
値が「2,457円」ですから、これに
「14.50倍」と「16.50倍」をかけると、
日経平均株価の妥当なレンジは、およそ
「35,600円〜40,500円」
ということになります。
これですと、5,000円近い幅があります
ので、過去1年間の市場の実績に基づいて、
もう少し上下を修正すると、
「36,000円〜40,000円が妥当なレンジだ」
ということになります。
実際に、過去1年間の日経平均株価の
推移を見ても、
・植田ショック前の加熱した高値の一時期
・植田ショックの異常な安値の一時期
・トランプ関税ショックの異常な安値
の一時期
を除けば、日経平均株価は「36,000円〜
40,400円」のレンジに収まっています。
インフレが進んで、企業業績が顕著に
亢進するまでの、向こう1年か2年は、
この「36,000円〜40,000円のレンジ」
で推移することになりそうです。
そして、これよりも低い水準では、
買いですし、高い水準では売りです。
そう考えると、今が買いか、売りか
の判断は、比較的容易です。
あとは、いかにメンタル面を鍛えるか
と、資金配分を適正に行うかにかかって
います。
株式投資で難しいのは、実は、今が
買いか、売りかの判断ではなくて、
「メンタルの管理と資金配分の管理」
にあるのです。
今回は、ここまででだいぶ長く
なりましたので、日経平均のPBR・
ROEの値とRSIとストキャの値
については割愛します。
<2> ドル建て日経平均株価
ドル建て日経平均 −− 263.45ドル
ドル建て日経平均株価は、ドルを
基軸とする外国人投資家の目線から
見た日経平均株価です。
6月13日には、ザラ場で「267.11
ドル」の高値が付きました。
この「267.11ドル」という水準は
昨年の12月を超える高さです。260
ドルを超える水準になったのは、
・2024年3月上旬 −− 273.59ドル
・2024年7月17日と8月中旬 −− 264.00ドル
・2024年9月27日 −− 278.18ドル (史上最高値)
・2024年12月5日 −− 264.62ドル
と、数えるほどしかなく、もちろん
現在の水準は、先月を超えており、
年初来高値です。ドル建てで考える
外国人投資家にとっては、現時点で
すでにかなり高い水準になっている
ということには、先月と同様に、
依然として注意が必要です。
(3) 当面の方向性
当面のところでは、次のようなプラス
要因とマイナス要因があります。
<1> プラス要因 −− 参院選挙
7月20日に参院選挙が行われることが
ほぼ確定的になりました。国政選挙を
目先に控えていると、政治家が色々な
経済対策を打ち出してきますので、
日経平均株価にとってはプラス材料です。
いわゆる「選挙相場」というやつです。
<2> プラスかも要因 −− 三角保ち合い
日経平均株価の日足チャートをよく
見てみますと、5月1日から現在まで
の1ヶ月半の間、小さな三角保ち合い
になっていることに気づきます。
このトレンドが続くとすれば、近日
中に上に放れる可能性があります。
ただ、三角保ち合いは、今年の3月末
までにかけて、週足チャートでも観測
可能なほどの明確な現象が示現したにも
かかわらず、4月上旬に発生した
トランプ関税ショックによって、ものの
見事に裏切られたという経験があります
ので、やや懐疑的に観ておく必要はある
でしょう。
<3> マイナス要因 −− 中東情勢
イスラエルとイラクの間で戦争状態に
なっています。このことは今のところは、
日経平均株価にもNYダウにも、負の
影響は限定的ですが、戦況が悪化すれば
株価には大きなマイナス要因として作用
することになります。
[2] 国策的なインフレは、まだまだ続く
やはり、トランプ大統領の思惑は
見え見えでした。
トランプ大統領の見事なまでの「手の
ひら返し」(=独りマッチポンプ)は、
遂にウォール・ストリートでは、
"TACO (Trump Always Chikens Out:
トランプ大統領は、いつもビビって
逃げる)" と揶揄されるまでになり
ました。
ということは、トランプ大統領が
「ヤバいと観る」ポイント、すなわち、
1.支持率の低下
2.株価が想定以上に下落
3.トリプル安によるキャピタル・
フライトの懸念
といった3つのいずれかが起これば、
トランプは株価にプラスになることを
言い出すのです。
また、トランプ関税の問題も、アメリカ
は中国にレアアースというアキレス腱を
握られているから、あまり過激なことは
アメリカ自身が「できない」ということも
明らかになってきました。
なので、大暴落は、もう当分起こら
なさそうです。
ただし、イスラエルとイランの戦況が
相当悪化した場合には、世界同時株安が
起こる可能性はありますが、中東諸国に
おいて、戦争はしょっちゅう起こって
いますので、株式市場にとっては、
「またか。。」というかんじで、急激な
マイナス要因にはなりにくいのでは
ないかという考え方も成り立ちます。
また、少し前に、トランプ大統領と
イーロン・マスク氏との確執が伝え
られても、NYダウは堅調を維持して
いますので、「地合いはかなり強い」
というかんじになっています。
それに、マスク氏はトランプ大統領に
「言い過ぎた。後悔している」と述べた
と伝えられていますので、この懸念も
交代していくでしょう。
(現役の大統領に喧嘩をうるのは、
いくらマスク氏でも、やはりビビった
のでしょう。)
そして、「トランプ大統領の思惑が
見え見え」なのと同じくらいに「見え
見え」なことがあります。 それは、
「日本政府が、かねてから国策的に
インフレを起こさせている」
ということです。
日本政府にとって最も大事な<matter
No.1>は、
「国策的にインフレを起こさせて、
膨大な借金の実質的な負の価値を
希釈すること」
です。
("matter" というのは「重要なこと」
という意味です。)
そして、この<matter No.1>を
遂行することによって、日本はハイパー
イフレによる経済破綻を回避してきて
いるのです。
しかも、この<matter No.1>は
12年半も前から始まっています。
2012年12月に始まったアベノミクス
です。政府と日銀による金融緩和と
資産インフレ政策です。
2013年当時は、「リフレ政策」など
という耳慣れない言葉が流行りましたが、
アベノミクスの政策は、要は「インフレ
政策」なのです。
ただ、昭和40年代や50年代の日本に
おけるインフレ経済を知っている高齢者
にとっては、「インフレ政策」という
表現に抵抗がある人が多いことから、
「リフレ政策」などという新しい言葉を
用いていましたが、アベノミクス以来、
現在に至るまで日本政府が推進してきた
政策は、「インフレ促進政策」そのもの
なのです。
この政策は、総理大臣が誰に替わろうが、
日銀総裁が「黒」から「植」に替わろうが、
続けざるを得ないのです。
なぜなら、これをやめてしまったら、
日本はハイパーインフレにまっしぐら
だからです。ハイパーインフレは、国家の
破綻を意味します。
日銀総裁が「白」から「黒」に替わった
時には、大きく変わりました。「白」の
「資産デフレやむなし」の金融政策から、
「黒」の資産インフレへの政策転換でした。
これでまさに、日本の金融政策の
方向性は、「白黒ハッキリ」したのです。
日本は、「インフレ政策に転換しないと
国家の借金が返せなくなって大破綻に
追いやられる」ということに遅まきながら
気づいたのです。
しかしながら、元・日銀総裁の白川氏
が悪かったのではありません。
私はたまたま、青山学院大学の現役
時代に、元・日銀総裁の白川氏と同僚
であった時期があり、研究室棟の
エレベータの中でツーショットで対話
させていただいたことが何度かある
のですが、白川氏はとてもノーブル
(知的で上品)な方でした。
悪いのは、借金し放題の政治家と
それを選んだ国民の民度です。
そして、問題なのは、誰が悪いのか
ではなくて、
「累積してしまった債務をなんとか
しなければならない」
という、目の前の現実なのです。
なので、「黒」が「植」に替わっても、
金融緩和を続けざるを得ないのです。
以上のようなことから、日本政府が
「インフレ経済」の促進を持続させて
いるということは明らかなのです。
さらには、報道では、「日本は金利
のある世界になり、これからも利上げ
になる」と喧伝されていますが、
ちょっと待って下さいヨ、と。
日本の政策金利は現在「0.5%」ですよ。
そして、「これから1年半くらいかけて
最終的には1.5%程度までの利上げになる
であろう」と言われていますが、それって
まだまだ「超低金利」ですよ。
日本では、長期金利も、まだ「1.5%以内」
に留まっています。(最高でも1.6%以内。)
欧米の政策金利は「5.50%」まで
上がっていたのです。今でもアメリカは
「4.75%」ですし、アメリカの長期金利
は4%台です。
政策金利において、景気にプラスにも
マイナスにも作用しない「適温金利」の
水準は、世界的には「3.0%」だと言われて
います。
そんな中で、日本は「植」に替わって
からも、政策金利は依然として「0.5%」
です。
生活面での物価(肌感覚の物価)は、
すでにかなり上がっているのに、金利
水準は超低金利のまま。
日本は「植」に替わってからは、
さすがに政策金利をゼロからは引き上げ
ましたが、それは、10年以上もの間、
超低金利を放置してしまうと、諸外国
から
「日本は借金が多すぎて、金利をいつまで
経っても上げられないんじゃんか!」
と見透かされてしまうので、モーション
として、少しだけ金利を上げて、
「安心して下さい。上げてますよ」
(とにかく明るい安村氏風:笑)
とアピールしているに過ぎないのです。
日本は、第二次世界大戦後に「奇跡の
成長 (the miracle growth)」を遂げた
と世界経済の歴史に残っています。
そして日本は、現在進行形で、
「奇跡の低金利」を持続して、またもや
世界経済の歴史に残る偉業を成している
最中なのです。
それは、
「これだけ低金利を持続して、実質的な
中央銀行による国債引き受けを続けて
きたのに、ハイパーインフレになって
いない『東洋の奇跡』」
という意味で、です。
これは、凄いことなのです!
そこに持ってきて、ダメ押しとなった
のが、最近の石破総理のこの発言です。
「2040年までにGDPを1,000兆円にする。」
ハイ!
2040年まで、インフレ経済が持続する
こと、決定!
政府はインフレを促進して、1,300兆円
を超える政府債務の実質的な価値を希釈
させたいのです。
そうしないと、日本経済は、いつかは
破綻してしまうからです。
このメルマガのタイトルどおりで、
「これからも15年くらいは、ずっとインフレ」
なのでしょう。それが「国策」なのですから。
(それに、普通の経済というのは、インフレ
がデフォルトですし。)
ハイパーインフレを回避するためには、
この「マイルドなインフレ政策」は
間違っていないですし、間違いどころか、
「マイルドなインフレ政策。この道しかない」
と私は思います。
ハイパーインフレの悲惨さに比べれば、
これまでに日本で進行してきた「マイルド
なインフレ」の、なんと平和的なことか!
さて、「2040年までにGDPを1,000兆円
にする」ということは、2024年の日本の
GDPがおよそ609兆円ですから、日本政府
はGDPを16年で「1.642倍」にすると公言
したのです。
ここで、日本のGDPの推移と日経平均
株価の推移を見てみますと、1987年のGDP
の値が373兆円で、その「1.642倍」が2024年
の609兆円です。
そして、1987年末の日経平均株価が
「21,564円」で、2024年末の日経平均株価
が「39,894円」ですから、37年間の間に
日本のGDPは「1.642倍」になり、日経
平均株価は「1.850倍」になったという
ことになります。
'87年末 − GDP 373兆円、日経平均 21,564円
'24年末 − GDP 609兆円、日経平均 39,894円
倍率 1.642倍 1.850倍
日本は、1990年から2012年までの22年間が
バブル崩壊による資産デフレの時期でしたので、
GDPが「1.642倍」になるのに37年かかった
わけですが、これからは、このような長い
デフレ期を経験しないのであるとすれば、
(37年 − 22年 =)15年でGDPが1.642倍
になるのも、あながちあり得なくはない、と
いうことは言えそうです。
政治家の言うことですから、あてにはなり
ませんが、もし仮に、2040年に日本のGDP
が本当に「1,000兆円」に到達するとすれば、
ここでの計算からは、日経平均株価は2040年
には、
39,894円 × 1.850倍 = 73,804円
ということで、日経平均株価は45,000円や
50,000円どころか、「73,000円を超える」
という計算になります。
それでも、複利で計算すると、上昇率は
年率で「4.0%」ですから、決しておかしな
ことではありません。
日経平均株価というのは、配当などの社外
流出項目を差し引いた残額で算出されるので、
配当などの社外流出項目を、年率で約「2.5%」
とすると、企業収益の年率の値は、これらの
2つ(「4.0%」と「2.5%」)を足して、
4.0% + 2.5% = 「6.5%」
ということになり、このメルマガの前半で
述べた「益回り」と概ね符合します。
ということは、理論的には、日経平均
株価は、2040年に向けて「73,800円」と
いった未曾有の水準に駆け上がっていく、
ということが論証されます。
このことは、決してイケイケドンドン
の強気な見解というのではなく、理論的に
導出した値」ということです。
そして、昨今、日本政府が公言した数字
も、あながち滅茶苦茶な数字ではない、
ということになります。
さらに言えば、これが、「インフレ経済」
ということなのです。
1987年末に、「日経平均株価が40,000円を
超える」と言っても「途方もない絵空事だ」
と考えられましたが、それはバブル経済を
除いても、37年後には現実のものとなりました。
(資産デフレの22年間を除けば、所要期間は
15年ですし。)
ですから、このままインフレ政策が継続
するとすれば、2040年には「日経平均株価
73,800円」が現実化するのでしょう。
ですから、暴落時に売るのはナンセンス
ということです。
ただし、2040年頃には「生活物価」も
「1.850倍」くらいにはなっているでしょう
から、
「株式投資をしておけば大儲け」
なのではなくて、
「株式投資をしておかないと大損だ」
ということなのです。
これが、「インフレ経済下での考え方」
ということなのです。
大儲けを狙うのではなく、長期的に観て
「インフレ負けしないようにすること」が、
21世紀の日本を生き抜く必須の心得です。
<今回は以上です。>
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