「トランプ大統領の思惑は見え見え」
いつものように市況を展望します。
[1] 市況展望(執筆日時:5月14日 午前1時)
(1) 過去1ヶ月を振り返ります
過去1ヶ月の日経平均株価を振り返り
ますと、4月16日に「33,658円」の安値
が付いたのを最後に、ほぼ一辺倒に上昇
してきています。
5月12日に、トランプ大統領が米中の
関税率を大幅に引き下げることを発表し、
それが90日の時限措置とはいえ、最悪
でもプラス24%しか関税率は追加され
ないこととなったため、日米の株価は
大幅に上昇しました。
NYダウは前日比+1,160ドルの
「42,410ドル」まで上がり、日経平均
株価も13日に付いた高値は、3月26日
に付いた直近の高値である「38,220円」
をあっさり抜き去りました。(終値は、
「38,183円」。)
5月13日までにほぼ出揃った日経平均
採用銘柄の企業業績は、下の(2)に示す
ような水準となり、事前の予想通り、
ややコンサバな(保守的で、控えめな)
かんじになりましたが、そのことよりも、
トランプ関税の緩和のことの方がかなり
強いインパクトがあり、株価は調整局面
を経ずに、上昇基調を辿って、13日には
「38,494円」まで上がりました。
(2) 5月13日時点の各種の指標
さて、ここでさっそく日経平均株価
のファンダメンタルズ指標とテクニカル
指標を簡潔に概観します。
(「ストキャスティクス」を「ストキャ」
と略して表記します。)
<5月13日のデータ>
日経平均株価の終値 −−− 38,183円 (前回、33,585円)
日経平均のEPSの値 −− 2,383円 (前回、 2,486円)
日経平均のPERの値 −− 16.02倍 (前回、 13.51倍)
日経平均のBPSの値 −− 27,274円 (前回、27,085円)
日経平均のPBRの値 −−− 1.40倍 (前回、 1.24倍)
日経平均のROEの値 −−− 8.7% (前回、 9.2%)
日足のRSIの値 −−− 87.74 (前回、36.24)
日足のストキャの値 −−100.00 (前回、72.60)
週足のRSIの値 −−− 47.51 (前回、22.76)
週足のストキャの値 −−100.00 (前回、37.60)
ドル建て日経平均 −− 258.09ドル (前回、233.34ドル)
(前回は、4月11日です。)
<コメント>
この5月13日のデータからは次の
ようなことが考えられます。
<1> 日経平均のEPSの値とPERの値
日経平均のEPSの値は「2,383円」
で、やはり事前の想定どおり企業業績
は下がっていますが、下げ幅は「100円」
ほどに留まっています。
現時点では、明らかにコンサバな姿勢
が業績予想に反映されているわけですが、
そのわりには、予想EPSの値はあまり
大きくは下がっていません。
そして現時点では、PERの値が
「16.02倍」で、比較的高くなっています
が、これには「第2四半期以降に企業
業績が持ち直すのではないか」という
期待が含まれていると考えられます。
すなわち、現時点では、
2,383円 × 16.02倍 = 38,183円
という計算になっていますが、第2
四半期において、たとえば企業業績が
「2,480円」まで回復すると考えれば、
日経平均株価の水準が今と同じく
「38,183円」だとしても、PERの値
は、「15.40倍」となり、非常に妥当な
水準だ、ということになるわけです。
(2,480円 × 「15.40倍」 = 38,183円)
つまり、このように考えますと、本日
の「38,183円」という水準は、第2四半期
以降の業績の回復を先取りして織り込めば、
「まぁまぁ妥当な水準である」ということ
になります。
ただし、上昇が一辺倒で、そのピッチも
速かったので、ここらで息切れするという
方が自然です。
<2> 日経平均のPBR・ROEの値
過去1年間のPBRの値の平均値は
およそ「1.42倍」ですので、現在の
PBRの値は、「ほぼ妥当な水準である」
ということになります。
前回(4月13日配信)の無料メルマガで、
「PBRの値が、過去1年間の平均値
である「1.42倍」まで戻れば、日経
平均株価は『38,300円前後』まで戻る
ということになります。」
と述べましたが、このことが、この
1ヶ月で具現化した、ということです。
トランプ大統領が、米中の関税戦争
に対して「90日間の停戦」に応じた
ことで、調整局面を経ることなく、
1ヶ月で株価が正常化した、という
わけです。
なお、ROEの値が「8.7%」と
比較的低くなっていて、それがその
ままだとすると、日本企業の資本効率
の悪化が懸念されます。
しかし、これも近い将来にEPSの
値がある程度は上方修正されると仮定
すれば、現時点においてROEの値が
「8.7%」だというのも許容の範囲内
であると考えられます。
<3> RSIとストキャの値
RSIとストキャの値は、週足の
RSIの値(47.51)を除いて、かなり
高いです。
日足でも週足でもストキャの値が
「100.00」なのは、4月7日から
現在にかけて、日経平均株価が急速に
上昇したからです。
前回も書きましたが、ストキャの値
は、変化に対して敏感に反応する性質
のものなので、このような高い値に
なっているのです。
このようなことから、週足のRSI
の値だけを見る分には、まだ上昇の
余地はありますが、目先のところで、
短期的な調整(=下落)が起こる
可能性は、かなり高いです。
<4> ドル建て日経平均株価
ドル建て日経平均株価は、ドルを
基軸とする外国人投資家の目線から
見た日経平均株価です。
5月13日の終値は「258.09ドル」
で、5月13日のザラ場では「260.71
ドル」まで上昇しています。
これは昨年の12月中旬以来の高い
水準です。260ドルを超える水準に
なったのは、
・2024年3月上旬 −− 273.59ドル
・2024年7月17日と8月中旬 −− 264.00ドル
・2024年9月27日 −− 278.18ドル (史上最高値)
・2024年12月5日 −− 264.62ドル
と、数えるほどしかなく、もちろん
現在の水準は年初来高値です。
ドル建て日経平均株価は、2024年
12月5日以降も、250ドル台の高値は
4回付いています。
・2024年12月27日 −− 255.99ドル
・2025年1月24日 −− 259.25ドル
・2025年2月18日 −− 259.84ドル
・2025年3月19日 −− 255.43ドル
これらの値が示現した時は、いずれも
為替が現在よりも円安(1ドル=148円
〜158円)だったことも影響しています。
(円安だと、ドル建て日経平均株価の
値は低めになります。)
ですから、ドル建て日経平均株価に
関しては為替のことも考慮に入れな
ければなりませんが、ドル建てで考える
外国人投資家にとっては、現時点で
すでにかなり高い水準になっている
ということには注意が必要です。
(3) 当面の方向性
これらの各種の指標を観る限りでは、
当面はいくらかの調整(=下落)を
演じることになりそうです。
昨年8月の植田ショック以降、日経
平均株価は下値を切り上げる三角保ち
合いが今年の2月までの半年間続き
ましたが、その間でも、小刻みながらも
明確な調整局面が少なくとも5回は
ありました。
<1> 2024/09/02〜09/11 下落率 9.8%
<2> 2024/10/15〜10/24 下落率 6.3%
<3> 2024/11/07〜11/28 下落率 5.2%
<4> 2024/12/27〜01/17 下落率 5.8%
<5> 2025/01/24〜03/11 下落率10.7%
最初の<1>と最後の<5>が大きめの
調整で、下落率は「10%前後」です。
あとの3回の下落率は「5%〜6%」
です。
現在までの株価上昇は、昨年8月の
大暴落からの株価上昇と、形状と期間
(値幅と日柄)が非常に似ていますので、
ここから先は<1>の下落と同程度の下落が
発生してもおかしくはありません。
5月13日の高値が「38,494円」なので、
その10%下というと、「34,650円前後」
となります。
また、「5%〜6%」の調整ですむ
場合には、安値のメドは「36,400円前後」
です。
昨年8月の大暴落からの戻りの時も、
上の<1>期間で、「大暴落時の高値まで」
の下落がありましたから、今回もその
パターンだとすれば、「34,650円前後」
までの調整がある(下落する)という
ことになります。
そして、日柄的にも、昨年8月の
大暴落からの戻りの時と同じパターン
だとすれば、
「高値から7営業日で最安値になる」
ということになりますので、5月13日
から起算すると「5月22日」に最安値
が付くという計算になります。
下落の値幅は大きめですが、下落
期間は比較的短い期間ですね。
昨年8月と現在とで、全く同じになる
というわけでもないでしょうけれども、
「ここからどんどん上がる」というのも、
「ここから10%以上下がる」というのも、
どちらも非常に奇異なことだと思います
ので、ここからは、
「5%〜10%の調整が入る」
のであろうと考えています。
NYダウも、ちょうどピークアウト
っぽくなっていますので、そういう
視点からも、日経平均株価も当面は
調整局面を迎えそうです。
[2] トランプ大統領の思惑は見え見え
〜中長期的な展望〜
やはり、トランプ大統領の思惑は
見え見えです。
関税騒ぎで株価をまずは下げさせて
おいて、ヤバいと観るや、手のひらを
返す。
この1ヶ月あまりの短い間にも、
・高関税の発表
・パウエルFRB議長を更迭するぞ発言
・対中関税交渉
の3つで、見事なまでの「手のひら返し」
をやってのけたトランプ氏には、むしろ
「失笑しながら拍手をしたい」くらい
です。
「ディール」というよりは、「独り
マッチポンプ」といったかんじです。
(「トランプ 1.0」の時は、トランプ
大統領がマッチで、パウエル議長が
ポンプでしたが、「トランプ 2.0」
では一人二役です。)
そして、トランプ大統領が「ヤバい
と観る」ポイントは、主に次の点です。
優先度1.支持率の低下
優先度2.株価が想定以上に下落
優先度3.トリプル安によるキャピタル・
フライトの懸念
そして、これらの3つは、次の一点
に絞られているのです。
最も大事な<matter No.1>
来年の中間選挙で勝利すること
("matter" というのは「重要なこと」
という意味です。)
そして、この「matter No.1」は、
自らの最終目標に続いていきます。
<トランプ大統領の最終目標>
任期の4年間を「ねじれ」ずに
全うして、思い通りの政策を遂行し、
「世界平和に貢献した」ということ
で、「ノーベル平和賞」を受賞し、
共和党の「歴史に残る」。
・「ノーベル平和賞」
と
・「歴史に残る」
というのは、「お金では買えない」
ので、大富豪のトランプ大統領に
とって、この世に遺された最期の
「どうしても欲しいもの」なのです。
まぁ、いいじゃないですか。
根源には私利私欲があったとしても、
それで世の中が本当に平和で豊かに
なるのだとしたら。
あくまでも、「なるのだとしたら」
ですが (irony)。
そして、なんといっても、トランプ
大統領は「トランプ 2.0」においては、
軍産複合体に代表されるような利権
集団とも、上手に付き合っているよう
ですから、このような「やりたい放題」
がまかり通っているのだと思います。
(上手に付き合っていなかったら、
今ごろ、とっくに暗殺の露と消えて
いることでしょう。)
だからこそ、就任からこれまでの
「やりたい放題」がうまくいっている
のだと思いますし、これからもきっと
うまくいってしまうのでしょう。
というわけで、これからもトランプ
大統領の思惑通りに事が進む可能性が
高いのではないかと考えられます。
すなわち、関税騒ぎの後は、減税と
移民排除です。いずれもインフレ要因
であり、民衆が望むと望まざるとに
かかわらず、株価や不動産価格と
いった資産系のものはもちろん、物価
も含めて、「価格」という「数字」は
上昇していくことになります。
そういった潮流を理解した上で、
落ち着いた行動をとることが、
結果的に正解に辿り着く可能性が
最も高いと思うのです。
ただし、トランプ大統領がやって
いることは、「独り 対 世界」
です。
(トランプ大統領には政権内に
ブレイン達がたくさんバックに
控えていますが、矢面に立っている
トランプ大統領は「独り」です。)
ですから、いつバランスを崩すかは
わかりません。トランプ大統領が
バランスを失ったら、ここで述べた
シナリオも崩れます。
<今回は以上です。>
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