兜町大学教授の教え 無料メルマガ No.257 (2024年2月15日)


「日経平均株価がどこまで上がるのかは、
本決算の業績次第」


 いつものように、市況を展望しますが、
その前に「2月18日に行う講演会」について
再度告知をさせて下さい。


[0] 「講演会」の告知です

 従来からお知らせしていますように、
2月18日(日)に、
「2024年2月 早稲田大学 補講」
と題しまして、Prof. SAKAKI塾主宰の
講演会を開催いたします。

 詳細は、当サイトの「講習会受付」のページ

http://www.prof-sakaki.com/zemi/lecture/lecture_240218.html

をご参照下さい。

 2月17日の正午で受付を締め切らせて
いただきます。
 残席僅かですので、参加をご希望の方は、
お早めにお申し込み下さい。

 お申し込みは、メールにて!

 メールのタイトルを「2月18日 受講希望」
としていただいて、

・お名前(ふりがなも付記して下さい)
・ご年齢
・ご住所
・Prof. SAKAKI塾の塾生様か否か

を明記の上、sakaki@prof-sakaki.comまで
どうぞご一報下さい。折り返し、受付確認
のメールと資料のファイルをお送りします。


[1]  市況展望 (執筆日時:2月15日 24時)

(1) 過去1ヵ月間の日経平均株価の推移

 1月16日以降の日経平均株価の推移を
辿ってみます。
 1月16日以降は、1月18日の「35,371円」
が安値で、2月7日までは、1月23日の
「36,984円」を最高値とする高値もみ合い
が続きました。
 8日から一段高となって、本日15日に
「38,188円」の昨年来高値を付けています。
 また、シカゴ市場の日経平均先物の値は、
現地時間の15日午前9時の時点で「38,445円」
を付けています。


(2) 日経平均株価は「どこまで上がるのか?」

 こういった状況になりますと、誰もが
気になるのは、
「日経平均株価は、どこまで上がるのか?」
ですね。

 先に結論を述べます。

 目先は、好調な決算と配当の権利取りが
ありますので、高値を更新しそうな勢い
ですが、遅くとも3月末〜4月上旬には
一旦は調整が入りそうです。
 それから先は、「業績次第」です。
 4月下旬から5月中旬に発表される企業
業績に翳りが観られなければ、4万円超えも
ありますが、企業業績が伸び悩むようで
あれば、現水準が高値圏になるでしょう。


(3) 近いうちに調整が入りそうです

 昨年末辺りから、「バブル超え」とか、
「日経平均株価は38,915円を超えるか!?」
とか、「日経平均株価、4万円!」とか、
「34年ぶりの高値」といった言説をイヤ
というほど耳にしてきました。

 私はこのメルマガの1月16日配信号で、
過去のデータを調査した結果として、

「『少なくとも、上昇率が30%になる
までは上昇基調が持続する』
ということになります。この調査からは、
「若干の調整を入れながら、
 30,487円 × 1.30 = 39.633円
くらいまでは上昇基調が続くのではないか
という推論が成り立ちます。
 ここでの調査からは、『3月から5月に
向けて、上昇基調が持続する』という結果
が出ました。」

と述べました。ですので、「バブル超え」
は想定の範囲内なのですが、同じくこの
メルマガの1月16日配信号の[2]の部分で、
オマケとして、
「1989年バブルの高値は例外なので、
『35年来の高値』は、意味がない」
ということを論証しました。

 そのようなわけで、「バブル超え」にも
「38,915円」にも「34年ぶりの高値」にも、
本当はほとんど意味はないのですが、その
ことに気がついているのは、圧倒的に少数
の人だけだと思います。
 マスコミが、これらの言説をあまりにも
連呼するからです。

 ですので、やはり「38,915円」とか
「40,000円」といった節目の株価には、
一定の意味が付与されてしまうでしょう。
 みんなが、「それが節目だ」と思って
しまえば、それは意味を持ってしまう
というのも市場の特性だからです。

 そして、こういった節目の株価には、
いわゆる「目標達成感」という市場心理が
伴いますので、その「手前」では、一定の
調整(下落)が起こると想定されます。


(4) 「手前」について

 株式市場では、「目標達成感」を伴う
何らかの株価が意識されると、多くの場合、
その「手前」で上げ止まってしまうという
ことが起こるようです。
 1989年末の時も、「年明けには4万円!」
ということが、しきりに言われましたが、
年明けの「手前」の「年末」に、4万円の
「手前」の「38,915円(終値ベース)」で
上昇は止まりました。

 また、1989年当時は、新日本製鉄(通称:
「新日鉄」。現:日本製鉄)の株が
「シンボリック・ストック(株高を象徴
する株式)」と言われていて、1988年には
600円台だった新日鉄の株価が、「1,000円
になる!」と騒がれました。
 しかしやはり、1,000円の「手前」の986円
が1989年当時の最高値となりました。

 ということで、現時点も、「38,915円」
をたとえ超えたとしても、「40,000円」の
「手前」では、一旦調整が入るのではないか
と考えています。
 そうだとしますと、「40,000円」の「手前」
というのは、下の(5)に述べるように、
「39,500円」かもしれませんが、「今」かも
しれません。本日の高値(38,188円)は、
「40,000円」まであと4.5%ですから、すでに
「手前」にはなっています。


(5) 日経平均株価は「どこまで上がるのか?」
 の当面の答え

 こういった「未曾有の局面」で、重要な
指針となってくれるのは、日経平均のPER
の値とPBRの値といった「基礎的要件
(ファンダメンタルズ)」です。

 ここで、「未曾有の局面」と述べたのは、
1989年の高値には意味がないからです。
「真性バブルのめちゃくちゃな高値」は
度外視(無視)するべきであり、現在の日経
平均株価の水準は、実質的には「史上最高値」
(=「未曾有の局面」)なのです。

 それに、1989年末に高値が付いていた
時には、日経平均のPERの値とPBRの値と
いった基礎的要件は、丸っきり無視されて
いたのです。
 今は34年前とは全然違います。

 日本の株式市場も、15年くらい前から
やっと国際化が進んだので、PERの値と
PBRの値といった基礎的要件に対して、
かなり忠実な動きをするようになって
いるのです。

 そこで、いつものように、日経平均の
PERの値とPBRの値を観てみましょう。

 1月15日の時点では、日経平均のEPS
の値が「2,269円」でしたので、日経平均の
PERの高値の値を「16.0倍」として、

 2,269円 × 16.0 = 36,304円

ということで、「当面の高値は『36,300円
前後』ではないか」と予想しました。

 その後、1月下旬から現在までにかけて、
第3四半期決算が発表され、本日で、ほぼ
出揃いました。
 2月15日の時点における日経平均のEPS
の値は「2,376円」なので、この1ヵ月で
企業業績は「4.7%」ほど増益になっている
のです。
 それを反映するかたちで、日経平均株価が
上昇してきていると考えれば、理論的にも
納得がいきます。

 この「2,376円」(2月15日の時点における
日経平均のEPSの値)をベースにして、すぐ
上の算式と同じように、高値のPERの値を
「16.0倍」として計算しますと、

 2,367円 × 16.0 = 37,872円

となりますので、ほぼ現在の株価水準と
同じ値が導出されます。

 ただし、この水準は、あくまでも「高値圏」
です。
 ですから、現在の株価水準は「適度な株価」
ではなく、「高値圏」であることに留意
しなければなりません。

 私は、講演会などで、よく以下のような
解説をします。(今月18日の講演会でも
解説しますし、このメルマガでも解説済み
だと思いますが、ここにも簡潔に書きます。)

 なぜ日経平均のPERの値は「16.0倍」
くらいが高値圏なのか、ということについては
次のようなことが根拠になっているのです。

・安全資産の期待利回りを「1%」とする。
・日本人の「リスクプレミアム」を「5%」
 とする。
 「リスクプレミアム」というのは、リスク
 資産(=値段が動く資産)に投資するなら、
 安全資産(=値段が動かなくて利息がもら
 える資産)に投資するよりも、たとえば
 「5%」は余分に(=プレミアムに)利回り
 が欲しいよ、という意味です。
・というわけで、リスク資産(=値段が動く
 資産)である株式に投資するのであれば、
 安全資産の期待利回りである「1%」に
 「リスクプレミアム」の「5%」を足した
 「6%」の利回りを期待するよ、という
 ことなのです。
・「6%」というのは「100分の6」ですね。
 そして、この「100分の6」を逆数にした
 「6分の100」が「PERの値」なのです。
 (「期待利回り」の逆数が「PERの値」
 です。)
・「6分の100」は「16.67」ですね。
・というわけで、日経平均のPERの値は
 「16.67倍」くらいでもおかしくはない
 ということになるのです。
・しかしながら、過去のデータを丹念に
 検証することにより、この「16.67倍」
 というPERの値は、日経平均株価の
 「高値圏」の値であることがわかって
 います。


 さて、以上のようなわけで、日経平均
株価は、その時点におけるEPSの値の
「16.0倍〜16.67倍」が高値である、という
ことがわかっています。それがファンダ
メンタルズに基づく高値の株価なのです。

 上では、「16.0倍」で計算しましたが、
ここでは「16.67倍」で高値を算出して
みましょう。

 2,367円 × 16.67 = 39,458円

 この「39,458円」、すなわち、
「39,500円前後」というのが、日経平均
株価は「どこまで上がるのか?」の当面
の答えです。
 「38,915円」の「手前」ではありません
が、「4万円」の「手前」ではありすね。

 なお、上で「16.0倍」で計算した値が、
「37,872円」なので、現在の水準(38,157円)
や、そのもう少し上で、かつ、「38,915円」
の「手前」が、当面の高値になったとしても
決しておかしくはないのです。

 つまり、日経平均株価は「どこまで上がる
のか?」の当面の答えは、

「39,500円前後」か
「38,500円前後」

ということになります。


(6) ここから先は、業績次第

 以上のようなわけですので、ここから
先に日経平均株価が、
・4万円を超えていくのか
・「現水準〜39,500円前後」のどこかで
 止まるのか
は、企業の「業績次第」なのです。

 第3四半期決算が出揃ってしまえば、
企業業績の水準は、あまり大きくは
変動しないはずです。
 ですから、4月中旬くらいまでは、
高値もみ合いになったり、調整が
入ったりして推移するでしょう。
 いわゆる「高値波乱の展開」です。

 問題は、その後の4月下旬から5月
中旬にかけて発表される本決算発表で、
企業業績がどちらに振れるかです。
・4万円を超えていくのか
・4月までの高値で止まるのか
は、「その企業業績次第」です。

 ですから、5月中旬になって、企業
業績が出揃ってみないと何とも言えない
ところはあるのですが、日本経済は、
まだまだインフレが続くと考えられます
ので、(4万円の手前や決算発表後には
一旦、調整が入るとしましても、)
「インフレ経済が持続する」
という前提を置けば、日経平均株価が
4万円どころか、それを超えてどんどん
高くなるといった現象も、充分に現実的
なシナリオになるのであろうと考えられ
ます。
 これは「強気のイケイケどんどん」の
脳天気な見解ではなく、「インフレ経済」
というものは、そういうものだ」という
視座からの冷静な見立てです。

 ただし、「インフレ経済が持続する」
場合には、物価も賃金も上がりますので、
株式投資で儲かっても「実質的な購買力」
は変わらないかもしれません。つまり、
数字上は儲かっていても、実質的には
変わらない、ということです。

 ですから、株式投資をしておくのは、
「儲けるため」ではなく、「インフレ
対抗力をつけるため」なのです。
 そして、株式投資をしない人は
「インフレ負けして、時代に置いて
いかれる」といった過酷な時代になって
いくのであろうと考えています。
(「インフレ負け」とは、インフレに
よって預貯金の実質的な購買力が
下がってしまうので、時間の経過と共に
貧乏になることです。)

 2013年1月(アベノミクス開始)〜
2022年2月(ウクライナ侵攻)までの
約10年間は、株価と地価だけが上がり、
物価と賃金は上がらない「資産インフレ」
の時代でした。「資産の価格だけが
インフレ」になる時代だったのです。
 ですから、株式投資や不動産投資を
していれば儲かったわけですが、そう
いった投資活動をしなくても、生活は
脅かされなかったのです。

 しかし、2022年2月(ウクライナ侵攻)
以降は、コロナによる経済停滞も明け
始めたので、日本でも「本格的なインフレ」
すなわち、資産価格だけではなく、物価
も上がる「インフレの時代」が始まった
のです。

 そして、2024年からは、物価に加えて
賃金も上がる「全面的なインフレ」が
始まります。そうなると、スパイラル的に
(螺旋構造で)インフレが加速してしまう
可能性が高いと考えています。
 これが、
「日経平均株価が4万円どころか・・・」
の根拠です。
 日経平均株価に対して強気なのではなく、
むしろ、日本の将来に対して悲観的なの
です。

 さらには、日本で「これからもインフレ
経済が続く」ということは、政府と日銀
の姿勢を観れば明白です。
 政府の膨大な借金を希釈化して、国家
財政を破綻させないようにするには、
金利を上げずにインフレを起こすしか
ないから、それをしっかりと実行してきて
いるのです。
 ですから、日銀は、植田総裁に代わって
からも金利を上げていません。YCCを
いじるだけとか、マイナス金利を解除する
だけというのは、利上げのうちには入り
ません。

 ただし、このインフレ誘導政策は悪政
ではなく、「この道しかない」といった
経済政策です。なぜなら、こうしなければ、
ハイパーインフレになってしまうからです。
 ハイパーインフレにしてしまう経済政策
こそが悪政なので、それに比べれば、これ
までの政府と日銀の姿勢は、かなりマシなの
です。
 ですが、ハイパーではない普通のインフレ
は、これからも続くでしょう。また、そうで
なければ困りますしね。ハイパーインフレに
なってしまったら、万事休すだからです。

 というわけですので、「株式・不動産・
金地金・外貨建て資産」のいずれかで資産
を持っておかないと「インフレ負けして
しまう時代」になっているのはたしかです。
 現金や預貯金(といったインフレ対抗力
のない資産)なんかを大事に抱えている
時代ではないのです。

 今は日経平均株価が高値圏ですが、調整
局面は必ずや、やって来ます。そこから先
は、株式投資をライフワークにしないと、
「恐怖のインフレ負け」です。


<今回は以上です。>


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